四十九日目

ラザレスとの戦いを終えた途端、強い疲労感で体が異様に重くなった。

事前にアルテアさんから学んだマナの扱いが予想以上の高負荷だったのか
再戦の緊張で精神的に大きく疲弊したのか
今までにない持久戦で心身ともに磨耗していたのか
或いはそれら全部かもしれない。

身体を動かす事をやめると途端に、考え事が頭を巡り始める。

サンドラの「過去を消す」
あの時、確かに彼はそう言った。
彼の言葉を実現し得るかもしれない大きな『力』が、どうやらこの島にはあるらしい。
事実、それを求めていくつもの組織が動いている。

ラザレスという男の存在を通して僕達が目の当たりにした矛盾も、
実は何がしかのそういった『力』が働いた軌跡の一部なのかもしれない。

倒れているラザレスの傍らに立つ。
ボロボロの甲冑に覆われたその体は、もはや呼吸をしているかどうかもわからない。

今度こそ本当に死んでしまったかもしれない。
もしくは、幾許かの時間を経て再び立ち上がるかもしれない。
そしてまた、これから訪れるであろう他の冒険者達に刃を向けるのかもしれない。

サンドラや、「仲間たち」と彼が呼んだ人々の為に。
満身創痍の自らを、斬り捨てた人々を省みる事もなく。

その先に彼は何を望んでいたのだろう。

もう動かないラザレスに目を落とす。
手を差し伸べるような真似はしない。



ただ、救われない彼の行く末を願った。