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Posted by オウミ・イタドリ (544) - 2010.09.27,Mon
(思いつきを片っ端から詰め込んだ結果ひどい文章量です ご注意下さい)

「すまないな、呼び出して」

ルアさんに呼び出されたのは、野営の準備を終えて一息ついた頃だった。

「山場を迎えるにあたって、できる事をもう少し詰めておこうと思ってね」

先日接触したサンドラが「おじさん」と呼ぶ男―――ラザレスが、この先に立ち塞がっている。
これまで多くの冒険者を退けてきたという彼が単独で衛るポイントを突破し、先への進路を開拓する。
それは今回の探索行で最大の山場だった。

ギルドの中でも僕達三番隊の勝算は、お世辞にも高いとは言い難い。
作戦立案から必要物資確保の交渉まで、ここ数日のルアさんはフル稼働だった。
今もそうだ。来るべき時に備えて作戦の検証に余念が無い。

「大丈夫ですか。ここ最近は寝る間も惜しんで」
「普段君達に体を張ってもらっている分、私も働かなければ割に合わないだろう?そういう事だ」

彼女は淡々とそう返し、小さな口元にうっすらと笑みを浮かべた。
この人の本質はおそらく義理堅いのだろう、とたまに思う。

■■■

「さて、用件は二つある。一つは、君自身の潜在能力について触れておこう」
「潜在能力?」
「うむ。簡潔に言えば『他者に巡るマナへの操作・干渉』だ。
 先日遭遇した、サンドラという娘と同じ性質の力だよ」

…唐突に知らされた内容が内容で、何を言われたか一瞬理解できなかった。

「…まさか。僕にそんな力は」
「ある」

強い断言。眼鏡越しの鋭い眼光が僕を射すくめる。

サンドラ―――華奢な子供の容姿ながら、周囲の者からマナを奪い去るという力を持っていた。
そのサンドラに大量のマナを吸われ、心身共に支障をきたしながら一戦交えた事は記憶に新しい。

「戦闘で絶え間なく敵の動きを凝視している君なら、幾分かの心当たりはあるだろう?
 素人目にもわかる程度に『相手が本来の動きを実現できていない』と感じる事は、一度や二度ではあるまい」

否定できない。しかし素直に受け止めるには、まだ抵抗があった。
思い当たる場面にはこれまで何度も遭遇しているものの、僕にとってそれらは全て偶然に過ぎない。

「それはただの、」
「運や偶然のみではない。君は気づいていないが、作用している事は確かだ」
「しかし。そんな特別な力があるような感じは全く…」

言われても、実感が無いばかりにピンと来ない。
ルアさんは「だろうな」と小さく息をついた。

「…当然ながら全てのケースに於いてではないし、その働きもまだ小さい。気づかない方が自然だろう。
 かくいう私も気づくのに少々時間がかかった。確証を得たのはごく最近だよ」

日頃感情の読み取りづらい表情は、相変わらず真顔で固定されている。
ただし今だけは、観察対象を前にした時の好奇を含んでいるようにも感じられた。

「そこで、だ。せっかく君にそういう素質が少しでも備わっているならば、私は是非とも活用を提案したい。
 君の力をより意図的に発動・制御する試みは、対ラザレスに限らず今後の探索行にも有効だろう。
 力を発動する為のごく基本的な方法ならば、私から教える事もできそうなのだが」

そこまで述べた後で、どうかな、とこちらへの問いかけが投げられる。
僕の返すべき答えは決まっていた。おそらく、彼女もそれを待っている。

「…お願いします」
「うむ、それでは始めよう。何、難しい事はない──」

■■■

「―――・・・。まぁ、いいだろう」
「…これだけですか?」
「うむ、ごくごく基本的な集中法だ。これを礎にして初めて、意図的な力の発動が実現する」

初めて受けるルアさんの指南は、意外にも早々に終わってしまった。
呼吸を整え、それを維持したまま自分の中を巡る力に意識を持って行く―――
誰でもできそうな内容に、少し拍子抜けした感じすら覚える。
もっと手の込んだ魔法使いらしい手法を想定していたものだから、その反動かもしれない。

「驚くほど簡単だろう?」

こちらの感想を見透かしたかのように、ルアさんが声をかけてきた。
すっかり身構えていただけに、少し気の抜けた苦笑いで答える。

「ふふ。だが、これこそ最大の基礎の一角を担う重要な所作だ。
 あらゆる局面で即座に実践できねばならない。例え戦闘中で、命を脅かす事態であっても」
「それは…まだちょっと、難しそうですね」
「先ずは『癖』として身につける事だ。現れる効果にも今は波があるだろうが、いずれ安定してくる」
「…。道は長いな」

教わった事を頭の中で反芻しながら、僕はコーヒー粉の入った缶を開けた。

■■■

「さて。もう一つ君に頼みたい事がある」
休憩に淹れたコーヒーを一口啜り、ルアさんの話は続く。

「ラザレスと相対するにあたって、より具体的な話だ。
 彼に挑むならば、前衛に回る者の激しい消耗は不可避となる。ゆえに私の持てる力は極力回復に注ぎたい。
 そこで、私の代わりに長射程の攻撃で奴の足止めを担ってもらえないだろうか。武器を持ち変えて」

と、彼女が逸らした視線の先には小型の自動弓が置かれていた。
持ち運び易さを重視して軽量に設計された品で、先日フィサリスさんに組み上げてもらったばかりだ。

「…あの弓で?」
「そうだ。先にも話した事だが、ラザレスとの戦いは必ず持久戦になる。
 消耗した彼の隙を突いて誰かが懐に飛び込む以外に勝ち目は無い。
 体格差を鑑みてそれはフィサリス君が適任だと考えると…、消去法で君しかいない」
「僕はリキュルトさん辺りが使うものだとばかり …いや、それはともかく。僕は弓の扱いを知りません」

肯定の言葉に代えて、ルアさんは一つ頷いた。眼鏡の縁が鈍く光る。

「ここで重要なのは、ラザレスに『不用意に近づき難い』と思わせる事だ。
 後方に控えた弓持ちを意識させて牽制し、フィサリス君の負担を減らす事が肝要である。腕前は二の次だ」
「だから弓を使う、と。…槍使いが弓を持つというのも、妙な話ですが」
「納得しかねるか?」
「いえ、話はわかります。ただ…さすがに今まで扱った事の無い武器なので、一抹の不安は」
「なるほど。では、念の為に指導を受けてみるのはどうかね?君がさっき名前を挙げた人物に」

それで少しは形になるだろう、と一言付け加え、行動を促す視線が投げられる。
今日は、更にもう一働きしなければいけないらしい。

■■■

その人に声を掛けるには、心の中で多少の思い切りが必要だった。

「―――それで、必要とされる働きを少しでも実現できればと …お願いできますか」

リキュルトさんの前に立つと、冬の早朝の空気を吸った時にも似た、自然と身の引き締まる思いがする。
若返るという現象を経てもなお、彼女の纏う厳しい雰囲気は相変わらずだった。
この人は、基本的に他人と関わる事を好まないのかもしれない。
そんな彼女に今、他人―――すなわち自分が進んで関わろうとしている。
その事に対する申し訳なさもまた、思い切りを要する理由の一つだった。

「…事情は理解したわ。教えてあげるから用意しなさい」

承諾してもらえた。
断られる可能性も頭の片隅にあっただけに、少しだけほっとする。

「助かります。…すみません、お手間を取らせて」
「謝るよりもさっさと行動なさい。時間は少ないのよ」
「は、はい!」

この人の指摘は無駄が無い。
事実、いつもの探索を終えて野営の準備が落ち着いた今、日没までの時間は決して長くなかった。
せっかく指導に時間を割いてくれる以上、明るく視界の広い時を更に浪費する事は憚られる。

必要な物を取りに、僕は走った。

■■■

「その調子なら、ある程度は素人くささを誤魔化せるわ」
「ラザレスが相手でもですか」
「少なくとも意識しないわけにはいかない程度に、存在感は出るでしょうよ」
「そうですか。…良かった」

視界が薄暗くなったのを頃合いに練習を終える。
基本的な扱いや動き方を一通り教わった上での評価に、思わず安堵のため息がこぼれた。

「それよりも」

こちらを見据えるアイスブルーの瞳が、一層鋭い眼光を帯びる。

「もっと躊躇いを捨てなさい。
 向こうの目を射抜こうが心臓を貫こうが、一切構わぬ気概で引き金を引くことね」

…痛い所を突かれた、と思った。

戦闘に障りの無いように押し殺してきたつもりでも
誰かへ刃を向ける事に対する苦手意識は、僕の中で未だにくすぶり続けている。
ベルクレアと刃を交え、マナに狂った兄妹を相手取ってきた今もまだ
心のずっと奥深くで密かに胸を痛める自分の存在は、消えずに残っていた。

それが覚束ない弓の扱いに顕れてしまった事も
また、それを見破られてしまった事も、僕としては苦々しい。
言葉を失った僕をよそに、リキュルトさんは続ける。

「ラザレスとかいう武人が噂通りの手練なら、相手に宿る殺気の有無を見抜く事も容易でしょう。
 本気で当てる気迫の欠けた射手に、警戒の意識を向ける価値があるかしら」

彼女の言葉はひどく的確だった。そして実際その通りだった。
返す言葉が見つからず、立ちつくす。

「技術が張りぼてでも本気の心構えで臨みなさい。
 本当に己の役割を全うしたい気持ちがあるのなら」
「……はい」
「どうせそんな付け焼き刃の腕前じゃ、本気で狙っても致命傷を与える事すらままならないわよ。
 明日練習試合の予定を組んでいるなら、その時に嫌でもわかるでしょうけど」

手厳しい追撃。
或いは、こちらの苦手意識を見透かした上でのフォロー …だったかもしれない。とても前向きに解釈すれば。
いずれにせよ、「ありがとうございました」と言った時の僕は落ち込んだ顔をしていたに違いない。

■■■

ルアさんの所へ報告に帰ろうとした時、不意に女の子と目が合った。
大きな帽子が印象的で、なんとなく見覚えがある。
この前からリキュルトさんの周りでたまに見る子だ。

そしてこんな所に居るという事は十中八九、そのリキュルトさんに用事があるのだろう。
…むしろ、僕のせいで長らく待ちぼうけをくらっていたのかもしれない。

「ごめんね。もう僕の用事はもう済んだから」

すれ違いざまに一言謝って、僕は足早にその場を後にした。



明日は、一番隊と実戦を想定して練習試合の予定を組んでいる。学ぶ事も試すべき事も多い。
…忙しい一日になりそうだ。
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